遺言とは

遺言とは、遺言者(自分の財産について遺言を残す人)が生前に「自分の財産を誰にどれだけ残すのか」についての意思表示をするものです。その意思表示を書面化したものが遺言書です。
遺言者が遺言書を前もって作っておけば、遺産は基本的に遺言書の内容にしたがって相続人に分けられます。そのため、遺産の分け方をめぐって相続人間の争いが生じにくくなります。
また、遺言書を作っておけば、法律(民法)で定められた人以外に財産をあげたり、寄付したりすることもできます。例えば、介護で世話になった長男の妻は遺言書が無ければ財産を受け取ることができませんが、遺言書により自分の財産を譲ることができます。また、親交のあった人や母校などに感謝の気持ちとして財産を寄付することもできます。

遺言を作らないとみんなが大変

遺言が無ければ、法律の定めに従って遺産が相続人(遺言者の財産を受け取る人)に分けられます。これを法定相続といいます。法定相続では、「この家を妻に」、「この預金を子に」というふうに具体的にどの遺産をだれに分けるかということは定められておらず、単に割合のみが定められています。例えば、「配偶者に2分の1、子に何分の1・・・」といった具合です。
遺産はお金や不動産、株券や絵画まで様々なものがあります。相続人にとっては、自分が受け取ることができる遺産の割合も重要ですが、「何を」が大きな関心事です。したがって、遺言が無い場合、相続人間で話し合って具体的にだれが何を受け取るかを決める必要があります(そのための相続人間での話し合いを「遺産分割協議」といいます)。しかし、普段は仲が良くても、それぞれの家庭事情が異なる相続人の間ではすんなり話し合いがまとまらないことが多くあります。その場合は、最終的に家庭裁判所での家事調停や審判により決めることになり、親族間の雰囲気は気持ちの良いものではなくなるでしょう。
被相続人としても、自分が遺言を残さなかったばっかりに親族の仲が悪くなってしまうのは悲しいことです。
そのようなことにならないために、遺言者が最後の意思表示として遺言を残すことにより、自分の財産を自分の言葉で、残された家族や大切な人に分けることを考える必要があります。

こんなときは特に遺言を作っておくべき

遺言を残さなければ法律の規定にしたがい遺産の分割割合が決められます(法定相続)。個々の事情を考慮していない法律の規定のとおりとすると、相続人間の争いが起こってしまうおそれがあります。また、法定相続どおりでは、遺言者の思いをうまく反映することができません。
特に、次のような場合には遺言を作っておくことで相続人どうしの争いを避けることができ、また、遺言者の意思を優先した遺産の分配が期待できます。

遺産争いのおそれがあるとき

相続人間の関係が良くない場合や付き合いがほとんどなかった場合には、相続発生により、相続人間の関係が悪化する恐れがあります。

法定相続ではできない遺産の分配を行いたいとき

配偶者など特定の家族に対して法定相続分より多くの遺産を与えたい場合や、法定相続では遺産を受け取ることができない人に対して、遺言者の意思を優先して遺産の分配をおこなうことができます。

遺言の種類

一般に利用されている遺言には、自筆証書遺言、秘密証書遺言そして公正証書遺言の3つがあります。

自筆証書遺言

遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自書・捺印して作成する遺言です。自分が思い立ったらすぐにでも書き始めることができる遺言です。専門家などに作成を依頼するお金がかからず、また、誰にも見られずに作ることができます。この遺言の弱点は、記載ルールや法律的な知識が不十分なまま作ってしまうと、最悪の場合、無効となってしまうことです。自分一人で作ることができるという手軽さがある一方、法律は自筆証書遺言を有効するための厳格なルールを決めているのです。さらに、自分で作って保管しておくので、いつの間にか紛失してしまったり、関係者に偽造されてしまうおそれもあります。

秘密証書遺言

自分で内容を作るという点では自筆証書遺言と同じですが、作った後の手続きに特徴があります。つまり、秘密証書遺言は、公証役場に持って行き、公証人と証人の立会いの下で保管を依頼します。公証人や証人を含め、遺言内容は誰にも知られることはありません。また、遺言書が公証役場に保管されることから紛失や偽造のおそれがありません。しかし、公証役場が関与することから手間と費用が掛かります。また、遺言内容のチェックを受けるわけではないので、記載方法によっては無効となってしまうおそれがあります。

公正証書遺言

公正証書遺言はもっとも安全で確実な遺言とされています。なぜなら、作成から保管まで公証役場が関与する遺言だからです。遺言内容を定める段階から専門家が入ってくれることから、方式に反して無効となるおそれがないことはもちろん、複雑な内容であってもしっかりと意思を反映した遺言の作成ができます。ただし、立ち合いの証人に遺言内容が知れてしまうことや、公証役場の費用がかかることを留意する必要があります。

遺言には公正証書遺言を選ぶべき理由

上記で説明したように遺言には何種類かありますが、そのなかでも公正証書遺言が作成・保管などの点で優れています。具体的には次のような利点があります。

形式面・内容面ともに法律に適合する

遺言はそれが有効とされるためには、形式的に法律に従った作りとなっている必要があります。自筆で書かなければならない部分・パソコンで作ったりコピーでもよい部分、日付の記載方法など様々なルールが決められています。また、内容面についても、好きなように書いて良いわけではなく、有効とするために法律を理解して書く必要があります。
その点、公正証書遺言では公証役場がサポートしてくれるので、形式面・内容面ともに整った遺言を作ることができます。自筆証書遺言のように自分の理解不足で無効となってしまう心配はありません。
また、遺言をすることについては、意思能力(権利義務について理解する能力)が必要とされています。認知症などの精神疾患を患っているときに作成した遺言は無効となってしまうおそれがありますが、公正証書遺言の場合は、作成時に公証役場で公証人による本人確認や打ち合わせなどにより意思能力の有無が確認されるので、無効となる心配はほとんどありません。

遺言の紛失・偽造の心配がない

公正証書遺言は、公証役場で遺言者の本人確認を経て作成され、作成後は公証役場に原本が保管されます。したがって、誰かに勝手に遺言を作られたり、内容を書き換えられること、失くしてしまうといった心配はありません。

自分で筆記できなくてもよい

手が不自由などの理由で自書できない場合、遺言者の口述によっても遺言を作ることができます。自筆証書遺言や秘密証書遺言では自書できなければ作ることができません。さらに、遺言者が病院や施設に入っていたり、体調が悪く自宅から出られないような場合でも、公証役場の公証人が出張して遺言作成をサポートします。

検認手続きが必要ない

検認手続きとは、遺言者の死亡後、相続人が遺言書を家庭裁判所へ提出し、相続人全員の立会いのもと遺言書を開封・確認する手続きです。自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合にはこの検認手続きが必要となります。相続人は戸籍謄本などの必要書類をそろえて家庭裁判所に出頭する手間がかかります。
一方、作成段階から公証役場が関与する公正証書遺言では検認手続きが不要となり、相続が開始したら遺言の内容を速やかに実現することができます。

公正証書遺言には何を書くか

遺言は形式的に厳格な方式が定められており、それに従わなければ無効となるおそれがあることを先ほど説明しました。内容面においても、法的に効力を持たせることができる事項は法律で定められています(法定遺言事項)。なお、この法定遺言事項については、公正証書遺言だけでなく他の遺言でも同じです。

法定遺言事項は次のとおり定められています。
※以下の事項の全てを遺言に入れなければならないのではなく、自分が必要と考える事項を入れます。

相続に関する事項
法定相続分とは異なる相続割合とすること
誰にどの財産を分けるかを具体的に指定すること
本来は相続人となれない人に財産を分けること
特別受益の持ち戻しの免除
相続人の排除やその取り消し

財産の処分に関する事項
財産の寄付

身分に関する事項
子の認知
未成年の子に対する後見人の指定

遺言執行に関する事項
遺言内容を実現する人の指定

祭祀主催者に関する事項
墓地や仏壇などの祭祀財産をだれが承継するかの指定

一方、法的な効力はないものの遺言の中で相続人等に対して思いを伝えることができます。そういった内容は付言事項(ふげんじこう)と言います。相続人等に対して、これまでの感謝を伝えることや、遺言で指定した財産の分け方について、どういう考え方でそのようにしたのかを説明することができます。法定遺言事項だけが書かれていると時として相続人間の不和を生じてしまうことがありますので、付言事項によって一言付け加えておけば無味乾燥な遺言が血の通ったものとなります。

必要書類

公正証書遺言を作成するにあたり、遺言者や相続人等 人についての書類と、遺言者の財産についての書類の準備が必要となります。

人についての書類

  • 遺言書案
  • 遺言者の印鑑登録証明書、パスポートや免許証などの顔写真入りの公的身分証明書
  • 遺言者と相続人の関係が分かる戸籍謄本/除籍謄本
  • 相続人以外で財産を受けとる方の住民票
  • 証人2人の氏名、住所、生年月日及び職業を記載したもの

財産についての書類

不動産の場合

    • 不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)
    • 固定資産税納税通知書又は固定資産税評価証明書

預貯金や株式等の有価証券の場合

    • 預貯金、現金、有価証券が特定できるよう
      種別、金額、預金先/預託先の金融機関名・支店名などを記載した書類や一覧表

公正証書遺言を作る費用

公正証書遺言を作成するには公証役場に支払う手数料が必要となります。
また、専門家に作成サポートをご依頼される場合は報酬が加算されることとなります。

公証役場の手数料

目的財産の価格 手数料
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 1万1,000円
1,000万円まで 1万7,000円
3,000万円まで 2万3,000円
5,000万円まで 2万9,000円
1億円まで 4万3,000円
  • 1億円を超え、3億円まで5,000万円ごとに1万3,000円が加算
  • 3億円を超え、10億円まで5,000万円ごとに1万1,000円が加算
  • 10億円を超えた場合、5,000万円ごとに8,000円が加算
  • 遺産総額が1億円未満の場合は、1万1,000円が加算されます。
  • 公正証書の原本、正本及び謄本の3部について、それぞれ用紙1枚につき250円かかります。
    ただし、原本については4枚までは無料です。
  • 病気等で外出が難しい場合は上記手数料を1.5倍とし、加えて公証人の出張費(日当+交通費)がかかります。
    日当:4時間以内は1万円、交通費:往復

弊所報酬

63,800円(税込み・実費別)~

 

公正証書作成の依頼

 

公正証書遺言完成までの手順

弊所のサポートにより公正証書遺言を作成する手順について説明します。

1.打ち合わせ
遺言者の意思及び遺言内容を関係書類とともに確認させていただきます。
また、必要に応じて相続人や財産の調査を行います。

2.公正証書案の作成
打ち合わせの内容・資料をもとに弊所にて公正証書案を作成します。

3.弊所と公証役場による内容の調整
作成した公正証書案の内容細部について公証役場と調整します。

4.公正証書遺言に調印する日時の調整
公証役場に出頭し、公正証書に署名・捺印する日を関係者で調整します。

5.公正証書遺言の調印
予約した調印日に公証役場に出頭し、公証人による遺言者の本人確認、遺言内容の読み上げ・確認を行います。
内容に間違いがない場合は遺言者、証人2人そして公証人が公正証書原本に署名捺印を行います。
これにより公正証書遺言が完成します。

最後に遺言者には公正証書の正本と謄本が契印のうえ交付されます。原本については公証役場で保管されます。

※ 証人について
公正証書を作成する際には証人2名が必要です。ご自身で見つけることが難しい場合には事前にお知らせください。

 

弊所提供の公正証書遺言作成サービス

弊所では、公正証書遺言を作成するために必要となる書類の収集や公証人との遺言内容の調整など、はじめての相談から遺言書の完成まで全般にわたるサポートを提供しています。

 遺言書全般および遺言書記載内容についての説明
 公正証書遺言の文案作成
 必要書類の収集
 公証役場との遺言内容についての調整
 公正証書遺言 調印日の調整
 公証役場への立会い
 公正証書作成時の証人としての出席

 

公正証書遺言の作成

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