高齢にともなう不安
年をとるにつれて物事を判断する能力や記憶力の衰えは程度の差はあれ誰にでも訪れます。また、高齢者の認知症罹患は増加の一途をたどっています。
判断能力の衰えや認知症等がおこってしまうと、自分の預金や年金等のお金の管理、不動産に関する契約等の財産管理、病院や介護施設への入院・入所契約などが十分にできなくなってしまうおそれがあります。特に、子が遠方に住んでいる場合や身寄りがいないような場合に判断能力の衰えなどが発生すると、自分の生活を支えている様々な契約を適切なタイミングで処理できなかったり、悪意を持った第三者に大切な財産を奪われてしまうようなことも心配されます。
任意後見制度とは
将来の判断能力の低下に備え、判断能力が十分あるうちに信頼できる人を任意後見人として選任し、任意後見契約を結んでおき、いざ判断能力が衰えてしまったときにその任意後見人に身の回りの面倒を見てもらうのが任意後見制度です。
任意後見人がしてくれること
ご本人が選任した任意後見人には、お互いに話し合ってどういったこと事務をしてもらうか決めることになります。
一般的に次のようなことが任意後見人の行う事務です。つまり、ご本人に代わって任意後見人がしてくれる事柄です。
不動産などの財産の管理
金融機関との取引(預貯金の入出金等)
年金や家賃など定期的な収入の受領
公共料金等の定期的に発生する費用の支払
介護などの福祉サービスの利用手続
病院での医療契約の手続
病院や福祉施設への入退所の手続
※任意後見人の役割は、任意後見人自身がご本人を介護するのではなく、契約関係の処理や支払など日常に発生する諸々の手続をご本人に代わって行うことです。
任意後見人に財産をとられたりしない?
ご本人に代わって財産管理や契約手続きなどをおこなう任意後見人ですが、ご本人の判断能力の衰えに乗じて勝手に預貯金を引き出されたりしないか心配される方もいらっしゃると思います。
任意後見制度は、核家族化・高齢化にともない、身寄りのない高齢者の判断能力が低下した場合のサポートを目的に国が創設した制度です。具体的には、『任意後見契約に関する法律(平成十一年法律第百五十号)』にその取扱いが定められています。そこでは、任意後見が正しく行われるよう、次のような安全策が施されています。
任意後見人の任務に適しない者は法律の定めにより任意後見人になれない。
任意後見契約は公正証書で作成される。
任意後見契約は法務局に登記される。
任意後見人の仕事は任意後見監督人によって定期的にチェックされる。
家庭裁判所は任意後見監督人からの報告をチェックする。
家庭裁判所は不適切な任意後見人を解任できる。
このように、法律は任意後見人の間違ったおこないによりご本人に損害を及ぼし、ひいては任意後見制度の信頼を毀損しないよう、幾重にも安全策を講じています。
あなたの状況に応じた任意後見契約
任意後見契約には、ご本人の状況(任意後見契約を開始する時期)に応じて、次の3つの型があります。
※重要なのは、どの型であっても契約時に本人の判断能力(契約を理解する判断能力)が必要とされる点です。契約を理解する判断能力が既に失われている場合は別の制度による保護が検討されます。
将来型
将来に判断能力が低下したときに備えて、ご本人が希望する者を任意後見受任者として選任し、その者との間に任意後見契約を結ぶ型です。
契約後、いざご本人の判断能力が低下したとき、任意後見受任者が任意後見監督人の選任申し立てを家庭裁判所に対して行ないます。
つまり、ご本人の判断能力の低下に気付き、適切な時期に家庭裁判所に申し立てをする必要があることから、任意後見受任者は普段からご本人の身近にいることが望ましいと言えます。そのため、親族以外の者を任意後見受任者に指定するときは、次に説明する「移行型」のように、見守り契約を結んで日頃からご本人の変化を観察できるようにして、任意後見発効のタイミングを逃さないようにする必要があります。
※任意後見人は、任意後見が開始される前は「任意後見受任者」と呼ばれています。
移行型
任意後見契約を結ぶと同時に財産管理等についての委任契約を結ぶ型です。
現時点で判断能力には問題ないものの、足腰が悪かったり病気のために銀行や区役所に行くことが難しく、財産管理も十分にできないという場合があります。そのような場合に、任意後見契約とともに委任契約を結ぶことによって、先ずは自分の生活の支援や財産管理をしてもらい、判断能力の低下が見られるようになったときにスムーズに任意後見へと移行できるようにしておきます。
即効型
判断能力の低下が若干みられるものの、任意後見契約を理解する判断能力はまだ残っているような場合で、すぐにでも支援が必要なときに利用する型です。任意後見契約を締結後ただちに家庭裁判所による任意後見監督人選任の申し立てをし、任意後見を開始します。
3つの型うち一般的には「移行型」が望ましいとされています |
任意後見契約作成の流れ
任意後見契約は、法律の定めにより、公正証書で作成する必要があります。
それでは任意後見契約を公正証書で作成する手順を見てみましょう。
1.任意後見人候補者探し
専門家などから任意後見人候補となる者を見つけ、相談などを通して信頼できる人に決めます。
尚、破産者、ご本人に対して訴訟を起こしたことがある者、著しい不行跡のある者その他 任意後見人の任務に適しない事由のある者は任意後見人となることはできません。
2.支援内容の決定
任意後見人にどのような支援をしてもらうか、ご本人と任意後見人候補者がじっくり話し合い、具体的な支援内容、報酬について決めます。
3.任意後見契約の文案作成
任意後見人候補者と話し合って決めた内容を基に任意後見契約文案を作成します。
※移行型のように、任意後見契約と同時に、見守り契約や、財産管理等の任意代理契約を結ぶ場合は、その文案もあわせて作成します。
4.公証役場での公正証書作成
ご本人及び任意後見人候補者が公証役場に行き、公正証書を作成し完成です。
作成後は契約内容が登記されます。
以上の手順で作成した任意後見契約の効力は、ご本人の判断能力が低下し、任意後見受任者(任意後見人候補者)の申し立てにより、家庭裁判所から任意後見監督人が選任された時から発生します。
任意後見契約作成時の必要書類
任意後見契約案を作成後、公証役場で公正証書を作る際に必要となる書類は次の通りです。
1.ご本人の印鑑登録証明書及び実印 又は 顔写真付きの公的証明書及び認印
2.任意後見人候補者の印鑑登録証明書及び実印 又は 顔写真付きの公的証明書及び認印
3.ご本人の住民票及び戸籍謄本
4.任意後見候補者の住民票
※ 書類は公正証書作成日前3ヶ月以内に発行されたものが必要です
任意後見契約の費用
任意後見契約にかかる費用には、1) 任意後見契約公正証書作成の費用と、2) 契約後にかかる費用があります。
1)任意後見契約公正証書作成の費用
(A) 公証役場手数料
1. 基本手数料
11,000円です。
移行型の場合は、その任意後見契約の手数料のほかに委任契約に関する手数料も必要になります。
2. 正本や謄本の費用
1枚につき250円かかります。通常、ご本人と受任者にお渡しする正本2通と、東京法務局への登記申請に使用する謄本1通が必要で、その費用がかかることになります。
3. 登記用印紙代等
印紙代2,600円と登記嘱託書留郵送料(実費)及び登記嘱託手数料1,400円が必要になります。
※ご本人(委任者)が公証役場に出向くのが困難な場合は、公証人がご自宅・病院・介護施設等どこにでも出張いたします。この場合、基本手数料の50%が病床加算として加算され、日当(1万円)及び交通費(実費)が必要です。
(B) 弊所報酬
70,000円~(税抜)
2)契約後の費用
任意後見人の報酬は、ご本人と任意後見人候補者の間で、契約によって定めます。
専門家に任意後見人を委任する場合には、ご本人が有する財産や管理事務の内容等に応じて報酬を毎月一定額支払うのが一般的です。
また、任意後見監督人の報酬は、ご本人が有する財産や管理事務の内容等に応じて家庭裁判所が定めます。
弊所が提供する任意後見サービス
任意後見契約の作成
任意後見全般についての相談から任意後見契約書の作成に至るまでサポートします。
任意後見人への就任
任意後見人候補者として受任し、契約で定めた後見/委任事務の代行を通してご本人の生活をサポートします。
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