日本人とイギリス人が結婚し日本で共に暮らすには「日本人の配偶者等」というビザを取得する必要があります。そのためには先ず法的な結婚手続きを済ませることからスタートします。結婚手続きは両国の法律の違い等から必要書類の入手等に時間がかかりますので早めに準備を進めましょう。
結婚手続きが完了したらビザ申請です。忘れてはならないのは、法律的に結婚していることとビザが許可されることはイコールではないということです。ビザが許可されるためには、法的手続きが完了していることに加え、夫婦生活の実質が伴っていることを証明する必要があります。
以下では、両国の結婚手続きとビザ申請のポイントを紹介するとともに、日本人の配偶者ビザで生活をスタートした後のビザや生活の情報を提供しています。
日本人とイギリス人の結婚手続
日本とイギリスの結婚制度の違いや手続きを進めるうえでの注意点などについて説明します。
日本とイギリスの結婚制度の特徴
日本・イギリスともに男女とも18歳が婚姻可能となる年齢です。ただし、イギリスでは両親の同意があれば16歳から婚姻することができます。
日本では女性が離婚直後など一定の場合に再婚を禁止する期間である再婚禁止期間がありますが、イギリスではこの制度はありません。
イギリスでは民事婚(Civil Wedding)と宗教婚(Religious wedding)の二通りの結婚手続きがあります。
さらに、イギリスには法律婚を経ないパートナーシップ制度という事実婚の制度があります。(ただし、皆さんがこれから取得を希望する日本人の配偶者ビザでは法律婚を済ませる必要があります。)
日本とイギリスの婚姻要件
日本 | イギリス | |
結婚可能年齢 | 男性18歳 女性18歳
未成年者は父母の同意が必要 |
男性18歳 女性18歳
父母の同意があれば16歳から可能 |
手続先 | 市区町村役場等 | 民事婚の場合:結婚登記所
宗教婚の場合:居住地の教会 |
どちらの国で先に結婚手続きを進めるか
ビザ申請のためには両国で結婚手続きが完了している必要があります。結婚手続きは日本・イギリスどちらの国で先に手続きしても問題ありません。二人が現在どこに住んでいるかや手続きにかかる時間など、状況に応じてより負担の少ないほうで進めてください。なお、両国の間には査証免除措置があり、日本人→イギリス、イギリス人→日本 どちらも査証なしで6ヵ月相手国に滞在することができます。
日本で結婚手続きをおこなう場合の手順
1.イギリス人の婚姻要件具備証明書を取得する
結婚相手であるイギリス人がイギリスの法律上 結婚することに障害が無いことの証明書です。
婚姻要件具備証明書はどの手続きで取得するか等によって以下のとおりAffidavit、Affirmation、Certificateと書面の名称は異なります。
日本国内で取得する場合
駐日英国大使館で婚姻要件宣誓書(Affidavit of Marital Status)または婚姻要件確約書(Affirmation of Marital Status)を取得します。
両書面は宗教色の有無の違いがありますが、法的効力は同じです。
必要書類
- パスポート
- 出生証明書
- 公的な住所証明となる書類
- 氏名変更や離婚を行っている場合はそのことを証明する書類
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提出先の在日イギリス大使館・領事館
駐日英国大使館 | 住所:〒102-8381 東京都千代田区一番町1
TEL: 03-5211-1100 |
在大阪英国総領事館 | 住所:〒541-0059 大阪市中央区博労町3丁目5-1 御堂筋グランドタワー19階TEL: 06- 6120-5600 |
イギリス国内で取得する場合
役所で婚姻無障害証明書(Certificate of No Impediment)を取得します。
必要書類
出生証明書
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2.日本の市区町村役場に婚姻届を提出する
必要書類
日本人側 | イギリス人側 |
・婚姻届(証人2人の署名)
・戸籍謄本 ・写真付きの公的身分証明書 |
・パスポート
・婚姻要件具備証明書及びその和訳 ・出生証明書及びその和訳 |
※市区町村役場により若干異なる場合がありますので事前にご確認ください。
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イギリスで結婚手続きをおこなう場合の手順
1.日本人の婚姻要件具備証明書を取得する
日本人が日本の法律上 結婚することに障害が無いことの証明書です。
日本国内で取得する場合
法務局または市区町村役場で取得します。
必要書類
- 申請書
- 戸籍謄本
- 写真付きの公的身分証明書
※法務局や市区町村役場により若干異なる場合がありますので事前にご確認ください。
イギリス国内で取得する場合
在イギリス日本大使館で取得します。
必要書類
- 申請書
- 戸籍謄本
- パスポート
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2.イギリスで結婚手続をおこなう
2-1. 教会又は役所に2人で婚姻予告(Give Notice)をおこない結婚許可証(Marriage License)を取得する
必要書類
- 日本人のMarriage Visitor Visa
- 日本人の結婚要件具備証明書
- イギリス人の出生証明書
- イギリス人の住所証明書類
- 顔写真
- 挙式の情報
2-2. 宗教婚の場合は管区の教会で、民事婚の場合は役所で結婚式をおこなう
これにより結婚証明書が取得できます。
2-3. 在イギリス日本大使館又は日本の市区町村役場に婚姻届をする
在イギリス日本大使館に届け出る場合
必要書類
- 婚姻届
- 日本人のパスポート
- 日本人の戸籍謄本
- イギリス人のパスポート
- 結婚証明書及び和訳
日本国内の市区町村役場に届け出る場合
必要書類
- 婚姻届
- 日本人の戸籍謄本
- イギリス人のパスポート
- 結婚証明書及び和訳
※市区町村役場により若干異なる場合がありますので事前にご確認ください。
日本人の配偶者ビザの申請のためイギリス人の在職証明書やTax Returnなどの収入証明書類を提出することがありますので、現地にいる間に取得しておくことをお勧めます。 |
日本人の配偶者ビザの申請
結婚手続きが完了したら、いよいよビザの申請です。
日本人が日本に、イギリス人がイギリス等海外に住んでいる場合
在留資格認定証明書交付申請(COE)
イギリス人が就労ビザ等を持って既に日本に住んでいる場合
在留資格変更許可申請
申請ルートは異なりますが、実体を伴った真実の結婚であり、日本で安定的に生活していけることを申請書で立証するというポイントは同じです。
なお、二人とも海外に住んでいる場合は、法律により、日本人の両親・兄弟姉妹等が申請代理人となって「在留資格認定証明書交付申請(COE)」をおこなう必要があります。※手続上の代理人は日本人の両親等が行う必要がありますが、書類作成等の実質的なサポートは弊所にて提供可能です。
日本人の配偶者ビザの対象者となる外国人
正式な婚姻手続が完了し、日本人配偶者と夫婦の実体をともなった生活を送っている外国人配偶者が対象となります。
したがって、次のような場合は対象となりません。
・法律上の婚姻手続を行っていない内縁関係であること
・法律上の婚姻手続は完了したが夫婦の実体をともなわない
・離婚している
なお、夫婦が同居していることは申請の許可を得るためには重要な要素ですが、同居していないことのみで不許可となることはありません。入管はあくまで偽装結婚による入国を防ぐためにこの点を考慮しているので、別々に暮らしている場合でも夫婦の実体があることを様々な角度から証明できれば許可を得ることは可能です。
日本人の配偶者ビザを取るための要件
日本人の配偶者ビザ申請で許可を得るためには次の全ての要件を満たす必要があります。
1)双方の国で婚姻手続が完了している
2)実体を伴った婚姻関係にある
3)日本で安定した生活を送れる経済基盤がある
手続上の婚姻手続きが完了していることは当然として、二人が真実に夫婦と言える共同生活を送っている必要があります。入管から偽装結婚ではないかと疑わることのないよう、様々な書類で夫婦の関係性を証明していく必要があります。「このようなプライベートなことまで入管に教えないといけないのか」と思われるかもしれませんが、毎日のように偽装結婚による申請案件を処理している入管担当者のことを考えるとやむをえません。また、できる限り多くの判断資料を入管に提供することが早期の許可につながることにもなります。
経済基盤については、ビザを与えても安定した生活が送れなければ最終的に生活保護や違法な活動に従事する可能性があるなど日本にとって不利益となることを防ぐためです。この点については、経済基盤は夫婦単位で判断されますので、例えば外国人が無職であっても、日本人配偶者に安定した収入があり二人の生活が維持できるのであれば問題ありません。
なお、外国人が別のビザで既に日本に暮らしていて日本人の配偶者ビザに変更する際、入管法その他日本の法律に違反している場合は不許可となる可能性があるので注意が必要です。
日本人の配偶者ビザの申請書類
最低限の必要書類は入管ホームページに記載されていますが、国籍・夫婦関係は申請ごとに異なりますので、臨機応変に対応する必要があります。
入管に対して「両国の婚姻手続きが完了し、真実の夫婦関係があること。そして日本で安定的に暮らしていける」のを証明する申請であることを常に意識してください。
一般的には次のような書類を提出します。
・パスポート(原本又はコピー)
・申請人の顔写真(縦4cm×横3cm)
・身分証明書
・経歴書
・日本人配偶者の戸籍謄本
・日本人配偶者の世帯全員が記載された住民票
・外国人の本国で発行された結婚証明書及び和訳
・直近1年分の住民税の課税(又は非課税)証明書
・直近1年分の納税証明書
・預金通帳のコピー
・勤務先の在職証明書
・勤務先の給与明細・源泉徴収票
・質問票(入管所定書式)
・身元保証書
・同居予定の建物の賃貸借契約書(又は所有権を証明する登記証等)
・その他 二人の関係や日本で安定した生活を送っていけることを証明する資料
日本人の配偶者ビザ申請から日本入国までの流れ
1.申請書類の収集・作成
・日本で発行される書類は3か月以内に発行されたものを用意してください
・イギリスの結婚証明書は申請前6か月以内に発行されたものを用意してください
2.住所地を管轄する入管へ申請書類を提出
審査期間の目安
海外から外国人配偶者を呼び寄せる在留資格認定証明書交付申請の場合:1~3か月
日本に在住する外国人配偶者の在留資格変更許可申請の場合:2週間~1か月
3.ビザの許可
在留資格認定証明書が発行されます。
※既に日本に住んでいる外国人の在留資格変更許可申請の場合は、許可通知となるハガキを持って入管へ出頭し、新しい在留カードを取得します。
4.イギリス国内の日本大使館・領事館で査証申請
通常は数日で査証が発給されます。
5.日本へ入国
到着空港によっては入国時、または後日郵送で在留カードが交付されます。
日本での生活スタート!
日本人の配偶者ビザは何年もらえる?
日本人の配偶者ビザの在留期間は6か月、1年、3年、5年のいずれかが許可されます。
初回の申請では通常1年の在留期間となります。
その後の更新申請で、夫婦としての生活の安定性などが考慮され3年や5年の更新が可能となります。
ビザ更新でより長い在留期間を得るためには、次のような点が判断材料となります。
・同居している |
日本人の配偶者ビザのメリット
就労制限がない
永住資格申請の条件が緩和される
就労ビザや留学ビザでは仕事の内容や就労可能な時間に制限がありますが、日本人の配偶者ビザではどのような仕事に就いても問題ありませんし、就労可能な時間にも入管法上の制限はありません。また、一方配偶者の扶養に入る必要もありません。したがって、日本人夫婦と同様に二人のライフスタイルを組み立てることができます。
さらに、永住資格申請についても日本人配偶者ビザは有利です。
通常では永住資格申請をするために10年以上日本に居住していることが求められますが、日本人の配偶者ビザでは次の条件を満たせば申請することができます。
・現在持っているビザが3年又は5年である |
日本人の配偶者ビザの注意点(別居・離婚による取り消しなど)
日本人の配偶者ビザでは夫婦の同居が求められます。特段の事情もないのに別居していれば、望んだ更新期間が与えられないだけでなく、更新自体が認められないと考えたほうがよいです。したがって、初回申請のときと同様、実体のある婚姻生活がこのビザを維持するために必要です。
日本人配偶者と離婚・死別した場合、このビザの根拠がなくなります。この場合、母国へ帰国するか、他のビザへ変更する必要があります。日本に留まるために婚姻歴や本人の経歴、収入などを総合的に考慮し、よりふさわしいビザを検討します。
最後に、初回申請や更新申請で虚偽の内容を記載することは絶対に行ってはいけません。入管は過去の申請情報の把握はもちろん、実地調査も行います。更新申請や永住資格申請が台無しとなって、結局 日本から出ていかなければならなくなるでしょう。
日本人の配偶者ビザをとらずに日本で暮らす方法
何らかの事情で日本人の配偶者ビザを申請すること・許可をうけることが難しいと考えられる場合、他のビザを取得してパートナーと暮らすことを検討します。
例えば、就労ビザの許可要件を満たしている場合には、就職先を見つけて就労ビザを申請・取得し、日本人パートナーと暮らし、日本人の配偶者ビザの申請条件を満たした段階でビザ変更申請をすることも一案です。
日本人の配偶者ビザの更新、永住資格の取得
日本人の配偶者ビザの更新
ビザは満了日の3か月前から更新の手続きが可能です。
直前にあわてて不十分な申請とならないようしっかりと準備したいところです。なお、申請後に当初の在留期間が切れても2か月間は猶予が与えられ、そのまま適法に在留することができます。
更新申請の審査は初回申請に比べて緩やかとなりますが、夫婦の経済状況が悪化している場合や別居しているような場合は細心の注意をもって申請を行う必要があります。
永住資格の取得
前記のとおり日本人の配偶者ビザは永住資格の申請条件が緩和されています。
次の条件を満たしている場合には申請を検討しましょう。
・実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し,かつ,引き続き1年以上本邦に在留していること
・配偶者ビザの在留期間が最長であること
・世帯に安定した収入があること
・税金や年金等の公的義務を適正に履行していること
・公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
・罰金刑や懲役刑などを受けていないこと
※日本人の配偶者ビザの最長在留期間は5年ですが、実務上3年の在留期間が交付されたら申請が可能です。
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