既に日本で就労系ビザをもって仕事をしている外国人が日本人と結婚した場合、在留資格「日本人の配偶者等」(以下、日本人配偶者ビザ)に変更することができます。
日本人配偶者ビザに変更してもそのまま現在の仕事を続けることができ、また仮に会社をクビになって無職になったとしてもビザは影響を受けることなく日本で暮らし続けることができます。
ただし、日本人配偶者ビザも、日本人と結婚したら必ず許可されるものではなく、申請者(外国人)・日本人配偶者の生活状況や資力などが審査され、許可基準を満たしていなければ不許可となります。
また、日本人配偶者ビザは許可されたとしても初めは1年間しか許可されないことが多いです。
ビザの変更は一度申請してしまうと「やっぱり就労ビザのままでいよう」というわけにはいきませんので、変更申請前に自分と日本人配偶者の置かれている状況をしっかりと把握したうえで申請を行う必要があります。
以下では日本で就労系ビザをもって働いている外国人が日本人配偶者ビザに変更するか検討する際のポイントを紹介します。
いま勤めている会社を辞める予定がないケース
現在勤務している会社で自分の専門性が活かせていて引き続き働き続ける意思がある場合は、現在お持ちの就労系ビザをそのまま継続してもよいですし、日本人配偶者との生活が安定しているようでしたら日本人配偶者ビザに変更しても問題ありません。
ただし、日本人配偶者ビザに変更しても当初1年のビザしかもらえない場合が多いので、その点には留意しておく必要があります。
なお、例えば、外国人が現在 就労系ビザである在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもって小売業の管理部門で働いている場合、そのビザ(「技術・人文知識・国際業務」)のままでは、接客担当を行うことはできません。
「技術・人文知識・国際業務」はその会社で専門的・技術的な業務を行うために与えられるビザであり、接客業務を行うことはそのビザの範囲外となります。もし、会社がその入管ルールを知らずに、または知っていながら接客業務を担当させてしまったら、外国人は資格外活動となりビザ取消しとなってしまう可能性がありますし、また、会社側としてもペナルティを受けるおそれがあります。
一方で、日本人配偶者ビザに変更した場合、在留資格「技術・人文知識・国際業務」のように会社内で担当できる業務範囲の制限がなくなり、基本的にどのような業務でも担当することが可能となります。
つまり、会社側としては、社員である外国人が日本人配偶者ビザに変更することによって、ビザの制限を気にすることなくより幅広い業務を担当してもらうことができることになります。
勤め先を退職・解雇となって次の就職先が見つかっていないケース
外国人が働いていた会社を退職したり、解雇されたりした場合で、次の就職先がなかなか見つからないようなときには速やかに日本人配偶者ビザへ変更したほうが無難です。
前記の在留資格「技術・人文知識・国際業務」のような就労系ビザは、たとえ仕事を失っても1年、3年など許可されているビザ期限までは原則としてビザは有効です。
しかし、正当な理由なく就労していない状態が3ヶ月以上続くとその就労系ビザが取り消されるおそれがあります。
また、スポンサーとなる雇用主がいない状態ですのでビザ更新も当然許可されません。
就労系ビザから日本人配偶者ビザへの変更は、変更したいと思った時に手続きすればよいので、日本人配偶者と相談のうえ適切なタイミングで変更申請を行ってください。
これまでと違う仕事に挑戦したいケース
在留資格「技術・人文知識・国際業務」のような就労系ビザをもって一般企業で働いているが、ネイリストのような美容系スタッフやコンビニのスタッフ、ナイトクラブのホステスなどとして働きたいと思っても、残念ながら現在はそういった仕事のための就労系ビザが制度上用意されていません。
しかし、日本人配偶者ビザに変更すると就労制限がなくなり、日本人と同様にどのような仕事に就くことも可能です。
美容スタッフやコンビニスタッフのように現在の就労系ビザでは就くことができない仕事もできるようになるのです。
また、外国料理の料理人のように一定の実務経験がなければ許可されない就労系ビザ 在留資格「技能」もあります。
いくら故郷の手作り料理の腕に自信があっても、実務経験がなければビザは与えられません。
この場合も、日本人配偶者ビザに変更すれば、実務経験に関係なく料理人としてお店で働くことができます。
(お店に雇ってもらえるかどうかは本人の腕次第ですが、、、)
以上のように、日本人配偶者ビザに変更すると仕事の選択肢がずっと拡がるなど多くのメリットがあります。
しかし、前述したようなビザ期限の問題や、さらに万が一、日本人配偶者と離婚することになってしまったら、最悪の場合、日本から出ていかなければならないという不安も残ります。
したがって、外国人と日本人配偶者の置かれた状況を考慮し、就労系ビザを維持するか、または日本人配偶者ビザへの変更を行うか検討してください。