今回は売買契約書についてお伝えします。

売買契約は日常・ビジネス様々な場面で日々行われており、契約類型で最も重要な契約といってよいでしょう。

また、その他の契約類型でも売買の要素が含まれたものもあり売買契約を理解することは大切です。

売買契約は売主がある財産権を買主に移転することを約束し、買主がこれに代金を支払うことを約束することによって成立します。財産権の移転と代金の支払いが対価関係に立つ有償・双務契約です。

さらに、売買契約は不要式の諾成契約です。この意味するところは、売買契約は口頭・書面を問わず、売主・買主の「売ります・買います」の意思表示の合致があれば成立するということです。

とはいえ、口約束だけで高額な売買を行うことは後々のトラブルの元となることから、契約書面を作成して当事者間で合意した条件・内容を明確に定めておく意義があるのです。

 

以下では動産売買(特注品)を例に契約書作成のポイントと骨子をご説明します。

 

売買契約書作成のポイント

 

目的物
後日のトラブルを防ぐために売買の対象となる目的物を契約書において可能なかぎり特定してください。商品名・品番・型番・ロット番号などで特定することや、受注生産の場合には仕様書や仕様明細書によって特定してください。仕様書などは番号を付けるなどして契約書がどの仕様書に基づいた売買なのかが特定できるようにしておく必要があります。また、契約締結後、納入前に仕様変更が生じた場合には、当該仕様変更が両者で合意されたものであることを別途書面で残しておいてください。
前記のとおり売買目的物を契約書で特定しておくことで、納入後に売主・買主の目的物に対するギャップによる争いを防止することができます。

目的物の引渡し・検査
売買契約で売主の最大の義務は、前記で特定した目的物(商品)を買主へ引き渡すことです。
目的物を「引き渡す」といっても、売主は単に買主のもとに届ければよいだけなのか、さらに届けた後に納入した目的物が正常に動くかを検査することまでが売主の義務に含まれているのか、等 引き渡しの時期・場所・方法を定める必要があります。
また、納入を受けた買主として目的物が壊れていないか等を検査する場合は、その検査方法・基準、期間、問題が発見された場合の対応について定める必要があります。
引渡し・検査は次に述べる「所有権の移転と危険負担」ともかかわるので、両者の認識に誤解が生じないよう定めてください。

所有権の移転と危険負担
目的物の所有権を持つ者はその物を自由に使用し、それによって収益をあげること、転売など処分をすることができます。したがって、売買の目的物の所有権がどの時点で売主から買主に移転するかを定めることが重要です。
目的物が買主のもとに届けられた時、目的物の納入後 検査を完了した時、あるいは代金を完済した時など相手方と合意した所有権移転時期を契約書に定めてください。

契約後 当事者いずれの落ち度によることなく、目的物が無くなったり、壊れてしまった場合のリスクを売主・買主どちらが負担するかを危険負担といいます。
通常は引き渡しによって目的物の物理的な支配が買主に移った時点を危険負担の移転時期とすることが妥当です。これによれば、目的物の引き渡し後に当事者の落ち度なく壊れてしまったような場合には既に危険負担は買主に移っているので、買主は代金を支払わなければなりません。先に述べた「引き渡し」とはどの時点を指すのか明確にすることが重要となります。

代金の支払い
合意した代金の額、支払時期、支払方法を明確に定めてください。支払い時期については目的物の引き渡しと同時が両者にとってリーズナブルですが、目的物の引き渡しが先(つまり売主の義務が先)となることが多いです。したがって、売主としては、代金が完済されるまで所有権を留保するなどの手当てをしておくほうが安全です。
代金の消費税については、一般的に内税表示が原則となっていますが、契約書の代金額に消費税が含まれているか(内税)、いないか(外税)を明確にすべきです。
また、支払方法が売主の銀行口座への振り込みによる場合は振込手数料をどちらが負担するかについても定めておいたほうがよいでしょう。

品質保証
目的物が契約書や仕様書で定めた品質や性能を満たさなかった場合、買主としては目的物の交換や補修、代金の減額などどのような対応を売主に求めることができるのか、また売主にいつまでその対応義務を負わせることにするかを定めます。一方、品質・性能上の問題が買主の指示等による場合には、売主としては自らが責任を負わないよう定めることも考えられます。

知的財産権
もし売主から購入した目的物が第三者の特許権などの知的財産権を侵害していた場合、買主はその目的物を使用できなくなったり、損害賠償を請求されるおそれがあります。
このような事態に備えて、目的物が第三者の知的財産権を侵害していた場合に売主の対応方法(代金の返金や第三者からライセンスを取得する等)を定めておく必要があります。
また、目的物が第三者の権利を侵害していないことの売主の保証も妥当な範囲で入れることも考えられます。

製造物責任
例えば、目的物を売主(メーカー)から購入して、買主(小売店)が消費者に販売したところ、その目的物の欠陥が原因で消費者がケガをしたような場合、買主はその消費者に対して損害を賠償する義務が生じます。このような場合に売主に対してどのような請求をできるかを契約書に定めておく必要があります。例えば、原因究明についての調査協力や消費者に支払った損害賠償額金の填補などです。

 

売買契約書の条項骨子


売買契約書(特注品の動産売買の場合)に定める条項骨子の一例は以下のとおりです。

 

第1条 売買についての合意と目的物
第2条 代金と支払条件
第3条 引き渡し
第4条 検査
第5条 所有権の移転
第6条 危険負担
第7条 遅延損害金
第8条 仕様変更
第9条 不可抗力
第10条 期限の利益喪失
第11条 契約解除
第12条 知的財産権
第13条 製造物責任
第14条 紛争解決

 

 

以上、売買契約についてお伝えしました。

売買契約は当事者の関係やその対象となる目的物によって定める条項の重みが大きく変わります。

さらに海外との売買であれば貿易条件など様々な要素が加わります。売主・買主どちらも契約後に頭をかかえるような事態とならないために、様々な状況を想定し明確な契約書を作成してください。

 

当所では、お客様の個々の取引内容に応じて適切な契約書の作成をサポートしています。
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