不可抗力条項の解説

 

契約で定めた債務を履行しない場合、その当事者は債務不履行となり、相手方に生じた損害を賠償しなければならないのが原則です。

しかし、その不履行が当事者にとってコントロールできない・防ぎようのない場合があります。
地震や洪水などの自然災害、テロやストライキ、政府の法規制変更などの人為的な事態により、契約当事者の一方が契約を履行できなくなる場合などです。

そのような不履行にまで相手方の損害を賠償しなければならないとなるとリスクの把握ができず当事者にとって大きな負担となります。

そこで、自然災害・戦争・テロなどの場合に契約債務を履行できなくても相手方に損害賠償責任を負わないことを定める条項が「不可抗力」条項です。

英文契約書ではForce MajeureAct of Godと呼ばれます。

日本法では(金銭債務を除いて)自然災害など不可抗力の場合は債務不履行の責任を免れることができると解釈されています。

しかし、英米法では契約によって合意したことは災害だろうが戦争だろうが守らなければならないという厳しい考え方があります。

したがって契約責任を免れるためには当事者間でどのような場合に免責されるかについて合意がなければならないのです。

 

不可抗力条項の例文

 

本例文では自然災害やテロなどで不履行や履行遅滞が生じても免責されると規定しています。本例文のポイントは不可抗力事由が継続する間は契約期間が延長されると規定されている点です。
Neither party will have any liability to the other for any failure or delay in performing any obligation under the Agreement due to acts of God or nature, fires, floods, strikes, civil disturbances, vandalism, terrorism, or power, failures. The Term of this Agreement shall be extended for the duration of any Force Majeure Event.

 

本例文では、不可抗力免責を求める当事者は、当該事態が発生したら直ちに相手方に通知するとともに、一定期間内に不可抗力であることの証拠書類を提出することが求められているのが特徴です。また、不可抗力による障害を除去・軽減するための努力も求められています。
A force majeure event means any event unforeseen by any party at the time of signing this Agreement that cannot be avoided, controlled and overcome (including but not limited to earthquake, typhoon, flood, fire, strike, war or riot, etc.). In view of the fact that the force majeure event affects the performance of this Agreement, in the event of force majeure, the party shall forthwith (i) notify the remaining parties in the form of telegraph, facsimile or other electronic means and submit the written evidence of force majeure within fifteen (15) working days; (ii) take all reasonable and possible measures to eliminate or mitigate the effects of force majeure event and to resume the fulfillment of its obligations upon the elimination or mitigation of the effects of force majeure event.

 

本例文では、資金不足などによる不履行は不可抗力によって免責されないことが明記されています。不可抗力条項は「地震、火事、洪水・・・」と羅列されているので、相手方ドラフトの場合一般条項だからとつい読み飛ばしてしまいがちです。本例のように契約相手や取引内容に応じて不可抗力に含めない事由を明示的に排除、または規定から削除すべき事由がないか様々なケースを想定してチェックしてください。逆に、免責を求める立場からは不可抗力事由に追加すべき項目があれば相手方と交渉して追加することになります。
Force Majeure, which includes but is not limited to, acts of governments, acts of nature, fire, explosion, typhoon, flood, earthquake, tide, lightning, war, means any event that is beyond the Party’s reasonable control and cannot be prevented with reasonable care. However, any shortage of credit, capital or finance shall not be regarded as an event of Force Majeure. The affected Party who is claiming to be not liable to its failure of fulfilling this Agreement by Force Majeure shall inform the other Party, without delay.